グラスの厚みと形は味覚に変化をもたらす
ガラスの器という言葉で一番身近な存在として思いつくのは、飲み物を入れるグラスでしょうか。グラスといっても、20年前くらいはそこまでいろいろなタイプのガラスが浸透していなかったように思います。
しかし最近はグラスも飲み物によってそれに合わせた形が作られたり、お料理に合う色のガラスの器がつくられたりと、様々なバリエーションのものが登場するようになりました。
とくにお酒を飲むグラスの種類は、この数十年で日本を取り巻くアルコール環境が大きく変化したことにより、随分と様変わりしました。
特に目立つのはワイン関係でしょうか。日本へのワイン輸出が大幅に増えたことや、世界的にも有名なカリスマソムリエの登場により、ワインに対する関心も比例し、ワインにあうグラスを作っているガラスメーカーもあります。
ワインはまず色と香り、そして味というふうに、五感と研ぎ澄ましながら愉しむ飲み物です。それを最大限に引き立てるグラスの形や、味に集中するための薄さ、重さ、手触りなど、突き詰めてみると、グラスが必要とする要素がたくさんあることに気づきます。
シャンパンもそうです。注いだ時の泡の立ち方をいかに美しく見せることができるかは、グラスの形に左右されます。ステムと呼ばれる足の部分と本体のガラスが別々に作られ、あとからくっつけられているグラスと、引き伸ばしてステムを作ったグラスでは、泡の立ち方はまったく異なります。グラスの背の高さや深さも重要です。
グラスで味は変わるのか?という実験を過去にしてみたことがあります。
同じワインを、100円ショップで購入したワイングラスと4000円くらいのワイングラスで飲み比べてみました。
ワインのプロでもグラスのプロでもないのですが・・・確かに違う!
際立って違うなと感じたのは香り。グラスの厚みや形によって香りの立ち方が違うということがわかります。
そして味覚。ワイングラスを傾けて口元にワインが当たると・・・程よい薄さのグラスは、特に泡や白ワインを美味しく感じさせます。
ビールでもそうですが、冷えたワインを口に入れるときにできるだけ厚みに邪魔されないということが大切なのだということを実感しました。
世の中に出回るグラスの多くは、機械で作られているものもあれば、手作りで作られているものもたくさんあります。どちらが良いというわけではなく、それぞれが持つ特性を愉しみながら食卓で使い分けると、また違う楽しみが生まれてくるのではないかと思います。
最後に。
ガラスは人が形を決めるのではなく、その日のガラス自身に尋ねて作るのだ、とあるガラス職人が教えてくれました。ガラスの特性はガラス自身が知っているので聞けばよい、と。なんと奥の深い言葉…
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