ガラスの誕生

知識, 食器

ガラスの始まりは紀元前5000年、日本の歴史では縄文時代前期です。

文明の発生とともに、人が生み出した最初の人工素材の一つです。

航海貿易商だった商人が、野営のときに積み荷のソーダ塊でかまどを作ってその上に鍋を乗せて調理したところ、海岸の白い砂とソーダの粉がまじってガラスができた、という嘘か誠かわからない記録もあるので、はっきりした始まりは不明ですが、メソポタミアかエジプトが発祥の地であるという説が有力です。

そんな中、紀元前一世紀のシリアでガラスの画期的な技術革新がおこり、吹きガラスの製法が発明されました。技術の発展にともない、大量に生産することが可能になったことから価格も安価となり、人々の間に広まったと考えられています。

吹きガラスの技法はローマを中心に作られ、ローマングラスとして世界各国に輸出されました。この技法は中国に伝わり、現代でも世界中で同じ技法が用いられています。

ヨーロッパのガラスはベネチアガラス・ボヘミアガラスとして発展し、17世紀にはイギリスでクリスタルガラスとして確立されています。

日本は陶磁器は発達したものの、ガラスの製造は重視されない傾向にありましたが、江戸末期に鹿児島県で美しいガラスが生まれます。

それが薩摩切子です。当時の藩主、島津斉彬は先進的な人物で、近代的なガラス工場を作りました。切子はカットグラスとも呼ばれており、赤・青・紫・黒などいろいろな色を使って、透明なガラスに色ガラスを被せていきます。そしてそれを、透明な色に触れるまでカットを施し様々な文様をうみだしていくのです。

一説によると、薩摩切子のカットや形がベルギーで1825年に創業されたガラスメーカーのものとよく似ていると言われています。

薩摩はヨーロッパに積極的に輸出や人材を派遣していたので、当時のその状況を照らし合わせると、ガラス文化が発達していたヨーロッパのガラスメーカーを参考にしたというのはあり得る話です。

切子はその後日本を代表するものとなり、今では若い職人や作家などが、切子をはじめとする自分たちのスタイルの技法を模索しながら独創性のあるガラスを作るまでになっています。

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