心躍る和食器の魅力を語る

食器

―はじめにー

毎年4月末から始まる大型連休に開催される有田陶器市。毎年120万人もの来場を誇るこの陶器市、今年はWEB上での開催となりました。

ここ数年陶器市に足を運んでいた身としてはとても残念。でも少なくともWEB上で体験できるということは喜ばしい!

陶磁器市の中でも有名なので多くの方がご存じのイベントではありますが、なにかできることはないかな、を考えました。

専門家ではないけれど、有田焼のこと、陶器市で出会った窯元さんのこと、自分が楽しいと思ったことであればお伝えできる。一人の器を愛する人間として、まだ出会っていない方が知っていただくきっかけになればと思います。

有田焼は肥前(今の佐賀県)有田の地で生産されるやきものです。

やきものにはいろいろ種類がありますが、その中でも「磁器」と呼ばれる種類のもので、実はここ有田が日本の磁器誕生の地なのです。

有田焼のことを「手早くわかりやすく」知りたい方は、4コマ漫画でわかりやすく説明されたコンテンツがありますのでぜひそちらを参照に。

で、カリーニョコンテンツへ誘導。

―和食器ほぼ初心者 なのに語る 有田焼の魅力ー

これを書いている著者(わたし)は洋食器業界に携わってきたので洋食器に関しては人より少しだけ詳しいと思って(思い込んで)います(笑)。

がしかし、和食器に関しては実はあまりわかっていない(汗)。

さいわい有田焼は磁器なので、他の産地よりかは少しなじみがある。

また、ヨーロッパ陶磁器の歴史とはすごく密接な関係がある・・・

なので、「洋食器業界にいた自分がおもしろいなー」と感じたことを絡めながら、主観的な意見になりますがちょっと語りたいなーと思います。

ちなみに「磁器ってなんだっけ・・」と思われた方。

わかりやすく解説した漫画がありますのでぜひこちらを参照に 

●有田焼きの魅力 其の一 昔からデザインが斬新で面白い

有田焼という名称は江戸時代ごろから使われ始めたようで、それまでは伊万里焼という名前が使われていました。現代では古伊万里と呼ばれているものです。

古伊万里は17世紀ごろから登場するのですが、デザインや形がよく見ると楽しいんです。

瓢箪とか菊とか鶴とか、わかりやすくめでたいものを表すデザインもありますが、猫や犬のデザインなども当時から。ただなんとなく顔がオジサマ顔だったりする・・・ちょっとプププな感じで・・400年も前だけれど、なんとなくそのころの人たちに親近感がわきますよ。

日本を代表する航空会社さんを彷彿とさせる鶴が羽を広げたデザインも。兎が体を丸めているところ、蝶が横を向いているさま、それらをそのまま器の形にしてしまっていたりするような器が、何百年も前からすでにあるということに感動してしまいます。

↑ 図録の写真を撮影して掲載って「引用」という体でOK? ↑

色使いもおしゃれで、コンビネーションや配置も絶妙。着物などもそうですが、絶妙な余白を残しながら文様を描く日本人のセンスの良さは抜群だなと、こういう小皿一枚を見ても感じます。

ここ最近、有田でもシンプルなデザインのものが増えてきてはいますが、伝統的な柄もそれぞれの窯で受け継がれ描かれています。

今回WEB陶器市で出展される、香蘭社・深川製磁・辻製磁社さんは伝統的なデザインのものを多く作り出されている代表的な窯元さんなので、楽しみです。

ちなみに。出展の中に「陶祖 李参平窯」さんのお名前があります。こちらは、有田で磁器づくりを成功させた李参平さんのご子孫がされている窯です。豊臣秀吉の時代に朝鮮人陶工が大勢連れてこられた中に、李参平という方がいらっしゃり、彼が有田の泉山で磁器の材料となる陶石を発見したことにより、有田での磁器づくりが可能となったのです。

その子孫が今でも窯を持ち、作品作りをされています。わたしもお湯のみを持っていますが、陶祖の窯、と考えるだけでなんだか格別な気持ちになります。

●有田焼の魅力 其の二 明治時代の超絶技巧っぷりがすごい

有田焼は17世紀ごろからヨーロッパへの輸出がさかんに行われていた、ということはご存じな方も多いと思いますが、17世紀末に、盛り返してきた中国陶磁器の輸出に押され国内向け生産へといったんシフトチェンジします。

その時に海外向けのために培った技術やデザイン性を残しながら、形や文様を日本人好みに変化させます。大坂、江戸をはじめ全国各地に広がります。庶民の暮らしに浸透したのもこの時期です。

そして迎えた明治維新。幕末のことからパリ万博などで出品されていたこともあり、近代化の波に乗っていた有田焼は西洋技術の導入や教育の充実により優秀な人材を日本中に送り出すようになりました。

このころの磁器の絵付け・・・まさに「超絶技巧」の世界です。この超絶技巧の技は有田だけではないのですが、ここ有田でも絵付けのレベルが別次元にいっています。職人たちの心意気を感じるものを垣間見れる時代です。

●有田焼の魅力 其の三 さまざまなスタイルの有田焼が楽しめる

現在の有田焼は、さまざまなスタイルのやきものを楽しめます。移り住んできた若手の陶芸作家さんも増えているということで、枠にとらわれない新しいARITAを目にすることができるのも楽しみの一つです。

好みの世界にはなりますが、今回のWEB陶器市でお目にかかるのが楽しみな窯はたくさんありますが、その中の2つほどをご紹介です、

おじいさんの代に有田の地にやってこられたという「やま平窯」さん。もともとは料理屋さんなどのプロ向けの器を作っていましたが、2011年から自社ブランドに力を入れはじめ、

エッグシェルと呼ばれるシリーズはこのやま平窯さんを代表するものとなりました。

エッグシェルは “卵殻手”と呼ばれる薄くて丈夫な磁器で江戸時代から明治にかけて輸出用食器として作られたものです。ただその技術は長い間途絶えており、やま平窯さんがエッグシェルを作り出される際に原型として用いたことにより、また息を吹き返したのです。

これがやきもの?と言ってしまいそうになるほどで、薄さはなんと1mm以下という繊細な器。飲み物が透けて見えるほど薄いのが特徴です。薄いのでのど越しがよく、飲み物がすーっと流れ込んでくる感覚は病みつきになります。

最近はヨーロッパ諸国にあるやきもののイメージで新しいシリーズを次々と生み出しています。

次は260年以上続く源右衛門窯さん。ここは陶器市の期間中、三大窯の中では唯一工房や絵付けの様子を公開されている窯なだけに、今回は残念です。

個人的なイメージですが、とてもユニークな窯だと思っています。というのは、ハンガリーの陶磁器メーカーヘレンドとコラボをして箸置きを作ったり、伝統的でありながら新しいことに果敢にそして大胆にチャレンジされていく窯、というイメージなのです。

鮮やかな色使いが特徴で、女性のファンも多いです。「gen_emon_kiln」のアカウント名で

美しい写真をインスタで上げていらっしゃいます。

最後に。余談になりますが、佐賀の方たちはめちゃくちゃ親切で、佐賀牛が牛肉の中では日本一おいしいと自分的には思っていますので、機会があればぜひ。

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