染付(そめつけ)の奥深さを伝えたい
~染付~
染付の器と聞くと、はて、なんのこと?と思われることでしょう。
ではこれなら?
白いお皿に青色でなんか文様のような絵が描かれているやつ。おばあちゃんの家や実家におそらく一枚はある(はずの)。
もしくは、日本料理屋さんで小皿とか小鉢とかなにかで青い絵(文様)が描かれたお皿。
たぶんどこかで、人生の中で一度は目にされたことはあると思います。
これが「染付」と呼ばれる器で、そめつけ、と読みます。染付は絵付けの技法名です。
染付の技法は中国で唐の時代(618年~907年、いまから1400年も前!)に生まれ、江戸時代初期の日本にも取り入れられました。
素焼きされた器に細さの異なる筆で絵付けをしていくので、キャンバスなどに絵を描くのと同じ感覚ではあります。
輪郭などは細かい筆、面を埋めるのに太い筆と使い分け、1300℃ほどの温度で焼成すると、青色が器によく溶け、なんとも言えぬ美しく艶やかな発色の絵付け皿ができあがります。
この青色の主な原料は酸化コバルトで、コバルトを含んだ粘土を顔料として使います。
中国では自然世界にありますが、日本では純度が高いものがあまり採れないため、中国と比べると青の発色に幅があるのが特徴です。茶色がかった青、緑がかった青、などなど。
この顔料は「呉須(ごす)」とも呼ばれ、日本の陶磁器メーカーの一つは、染付技法のことを呉須と呼んでいます。
染付と一口に言っても技法は何種類かあります。
一番繊細な絵柄を表現できる技法は「下絵付」ではないでしょうか。
下絵付とは、粘土で固めて素焼きした器に筆で描く技法です。
ざらざらとしたレンガのような状態のお皿に絵を描くのですが、そこに絵具をのせていくとどうなるでしょう。
器は水分を吸いやすい状態のため、当然絵具は器に染み込んでいきます。土が水を吸うようなイメージで染み込んでしまうと、描き損じても消せません。
失敗したものは廃棄するしかない、という一発勝負の世界です。
華やかな色がある絵付けのほうが難しいと思われがちなのですが、青色一色で書かれている染付も高い技術が必要となります。
ちなみに、華やかな色がついた絵付けは「上絵付」と呼ばれるのですが、釉薬がかかった上から絵付けを行うので、万が一はみ出ちゃった!という場合にも、絵付のための油(松脂からとったテレピン油など)で消して描き直せます。
(文化教室などで「絵付けレッスン」と呼ばれるものは、だいたいがこの「上絵付」の技法でのレッスンだと思います)
さて染付。
ちょっと墨が滲んだような感じに描かれた青色の絵付けは、伊万里や有田などをはじめ海外ではマイセンやロイヤルコペンハーゲンなどで見ることができます。各窯によって青色も異なるので、その窯の技法と照らし合わせながら見比べていくのも面白いかもしれませんね。
日本で染付の器が広がりだしたのは元禄時代(1688~1704年。あの“生類憐みの令“の徳川綱吉の時代です)、江戸の職人相手に小料理屋などができはじめ、外食が流行りだします。(イメージは時代劇に出てくる職人や町人が集まる町の料理屋さんです)
その料理屋さんで有田の染付などが使われるようになったといわれています。
染付で私が楽しむポイントは、技術もそうなのですがそのデザイン性です。
洗練されたデザインは現代でも使えそうなものがたくさんあって、その文様一つずつにも意味があったりするので、調べてみると面白いんです。
描かれているモチーフ名で呼ばれることが多いです。tあとえば「染付竹口兎図皿」「染付山水図皿」などなど。初期のころは、中国の柄などを模写したようなものが多かったようですが、そこはさすが日本人。独自の文様スタイルを編み出し進化させます。
他国の文化を取り入れて独自のスタイルを生み出すという能力に日本人は昔から長けていた、ということが染付からもわかります。
最近は和食器だけでの組み合わせではなく、洋食器やおしゃれなテーブル用品と一緒にディスプレイされることも増え、様々なコーディネートを楽しむことができます。
染付の世界は奥が深く、まだまだ深堀ができる分野で、これまた歴史ととても密接につながっています。
中国や日本の染付が西洋陶磁器の始まりのカギを握るものでもありますので、ご興味がわいた方はぜひ深堀してみてください。
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