目の覚める赤に必要な金の存在

食器

前回、焼き物にとって特別な色として、金・瑠璃色・マロン色(赤)の3色をあげました。

今回は赤色について。

特別な色ではありますが、目の覚めるような赤色を作ることは実は困難ではありません。金属を使うことにより、鮮やかな赤色をつくることができます。

でも実はこの金属が有害だったりします。結晶セレンと呼ばれるものなのですが、これを使うと人体に有害が物質が出ることもあるため、それを使わずに美しい赤を出す方法が模索されてきました。

この意外な解決策が、鉄を使うことでした。鉄は安く、絵付けたのちに800℃くらいで焼くと赤色は出ます。ただ問題は、くすんだ赤しかでません。

もっと美しく鮮やかな赤を出すためにはどうすればよいのか。

それが金を混ぜることだったのです。もちろん金をそのまま使っても金色に発色するのですが、さらに錫を混ぜて絵具を作ると焼き付けたときにさらに鮮やかな赤となって現れます。

これがマロン色、含金色と呼ばれる赤です。

器に書かれた赤からは金色はみじんも見えません。赤の中に取り込まれてしまうのです。赤色をだすために、金はその姿を隠してしまうのです。慎み深く気品高い金を身にまとった艶やかな赤・・なんとロマンある色なのでしょう。

それでは女性が好きなピンクはどうか。実はこの色にも金が含まれています。赤色ほどは使わないものの、ピンク色をだすためにも金が必要となるのです。

ピンクは温度が低いとオレンジに仕上がってしまうことがあるため、820℃位までに上げるときれいなピンクとして焼き付きます。

面白いことが書いてありました。焼成でオレンジ色になってしまった場合、再焼成をすることによってピンク色にすることができるそうです。

ただ赤系の色をも含んでいるときには、経験と勘などで焼成の判断が必要なようです。

どの色も焼成温度はとても大切なのですが、特に赤とピンクが温度に左右されやすいようで、さらに気をつける必要があるそうです。

ちなみに。洋食器の中で鮮やかな赤色やピンク色の色をふんだんに発揮しているのは、イギリスの陶磁器メーカー、エインズレイ社。

赤・ピンク・黄色・コバルトなどの色がカップ表面いっぱいに吹き付けられたカップ&ソーサーなどは、今でも根強いファンを持っています。ただし絵付けというわけではなく表面はスプレーでの吹付のため、絵付け、とは少し異なりますが、色合いのイメージをつかんでいただくのには一番いいブランドかもしれません。

残念ながら、イギリスのストークオントレントにあったエインズレイの工房は2014年に閉鎖されてしまいました。ただ商品は、市場でまだ目にすることはできますので、みつけたらぜひ一度手に取ってみてください。近代になって製造された赤色と少し昔の赤色ではおそらく色がだいぶ違っていると思います。

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